社員教育の基礎
資本主義における企業の最大の目的は、利益を追求することです。
どんな企業でも人件費などの経費が、利潤を上回る状態が続けば信頼を無くし、やがては倒産します。
赤字になればコストカットして存続を目指し、黒字になれば利潤の運用も考慮して増やします。黒字額を大きくしていくのが企業の命題ともいえます。
現在のような企業の体制は、ヨーロッパでほぼ生まれています。
産業革命以前は生活に必要のない金銭は、教会(ローマ教皇率いるカトリック)に差出すものでした。自らは慎ましく暮らすことが、善良な人間のすることだとされていたわけです。
シェイクスピアの喜劇『ヴェニスの商人』に出てくる悪役シャイロックは、その規範にそぐわないものの代表として描かれています。
そういった民衆からの布施を受け、裕福になった教会は内部にの不品行と信仰の堕落が生じました。世俗権力との争いに敗れ、ローマ教会の権威は長い時間をかけて失墜しました。
一方、ルターやカルヴァンなどプロテスタント(抵抗派)が自論を広げ、民衆に受け入れられました。
特にオランダ、ベルギーに広がったカルヴァン派は贅沢を禁じた一方で、信仰に裏打ちされた勤勉の結果生じる蓄財は、神の与える報酬として奨励しました。
この考えが民衆に浸透し、利潤を追求する経済態度の追い風になりました。
人々は己の救済の副産物として利潤を追求し、その結果教会との関係性が逆転しました。宗教観にも裏打ちされた利潤の追求はやがて合理性を求めて雇用が発生し、企業という形態が出来たのです。
この経緯は『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ウェーバー著)に詳しく説明されています。
現在でも、自己実現のために独立・起業をめざす人は多くいます。
企業はそういった人物を育てるゆりかごでもあるという側面をもっています。
良い社会人として社員教育を行い、人を成長させていくという意味でも、重要なことです。社会的な動物である人は、職業を持つことで精神的な充足、安定を得ます。
自社の歯車を作るという感覚では、良い人材は育たないといわれるのは、このためです。