マナーとホスピタリティを維持するために

ホスピタリティとは?

ホスピタリティとは、「思いやり」、「心からのもてなし」を意味する用語である。相手をもてなし、喜ばせるサービスの根幹ともいえるホスピタリティだが、ホテル、旅館等のサービス業は勿論、バス、タクシーなどの交通など多くの業種にその精神が取り入れられている。

海外では日本のサービス全般の評価は概して高く、台湾の温泉地などでは、日式(日本式)のサービスを学ぼうと学生などが研修に励んでいる。サービス業というものが定着し始めて間もない中国でも、日式というもてなしは憧れの的である。挨拶の度になされる美しい礼。何かを頼んでも一貫して同じスタッフが対応してくれること(分業制が発達したアメリカなどでは係が違うと、たらいまわしにされることがあるそうだ)お出迎えから、お見送りまで、態度が一切変わらない日本のもてなし方は、外国人観光客の心に深く印象を残す。

日本的なもてなし方をあらわす故事に『鉢の木』の伝説がある。『鉢の木』は、能楽の一曲。佐野の貧しい武士、常世は、そうと知らずに幕府前執権北条時頼をもてなす。大事にしていた鉢の木を折り薪にし、僧形の時頼をもてなした彼は、今は貧しい暮らしだが、ことがあったら「いざ鎌倉」だと述べ、のちの召集の際にも偽りのない行動をとる。時頼は彼を賞賛し、多額の褒美を与えた。この故事を冠した精進料理店はミシュランガイドにも載っている。鎌倉『鉢の木』である。

この『鉢の木』の精神は、茶道に引き継がれ、華美ではないが情味豊かなもてなしを産んだ。日本のサービス業が評価が高いのは、そのためである。茶道の精神は森下典子『日々是好日~お茶が教えてくれた15の幸せ』(飛鳥新社)や、岡倉天心『茶の本』などで触れられる。近年は研修に茶道のある会社もある。